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40余年ぶりの出版 《春の海》

少し気が早いですが、今年も残すところあと2ヶ月となりました。どうぞ年末まで残りの日々を思い残しのないようにお過ごし下さい。で、話は年が明けてお正月のこと。
お正月に日本にいるときっとどこかで耳にするのが、尺八と箏の名曲《春の海》ですね。日本人ならばみんなが知っている曲です。
作曲者は宮城道雄。盲目のお箏の名人としても有名ですが、道雄がまだ失明する前の幼い頃、父親の故郷、瀬戸内海の「鞆の浦」で見た美しい景色の思い出を曲にしたのが《春の海なのだそうです。
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この《春の海》をヴァイオリンとピアノの二重奏に編曲した楽譜が、なんと40数年ぶりに全音で出版されました。ずっと以前に出版されていたのは「全音ヴァイオリン・ピース」というシリーズで、1曲単位で出版されていた楽譜ですが、今回は『〔標準〕ヴァイオリン名曲集 1 』という新しい曲集に収められた形で出版しています。
【「ヴァイオリン・ピース」は全音で1950年代〜1970年代前半に出版されていたピース楽譜で、少なくとも出版時期が異なる2通りのシリーズがありました。】

この《春の海》をヴァイオリンとピアノのために編曲したのは、NHK交響楽団が新交響楽団または日本交響楽団という名称だったときに、第一ヴァイオリンの楽員またはコンサートマスターとして活躍された日比野愛次(1906-1998)さんです。和楽器による原曲の味わいを大事に残しつつ、ヴァイオリンならではのピツィカートなどの奏法も取り入れながら、コンサート向きのユニークな編曲になっています。
現在ヴァイオリン奏者として活躍されている日比野さんのお弟子さんは沢山いらっしゃることと思いますが、ぜひ先生を偲んで手に取っていただきたいと思います。
また若いヴァイオリニストの方や学生さんには、新鮮で新しいヴァイオリンのレパートリーとして取り組んでみてはいかがでしょうか。