今日は、フランスの大ピアニスト、アルフレッド・コルトー没後50年の記念日です!
大ピアニストとして有名ですが教育者としてもたいへんな功績を残しており、パリの音楽学校、エコール・ノルマル音楽院の創立者でもあります。
学生の頃、ショパンを弾くときに師匠から「コルトーを聞きなさい」とよく言われ、たくさん聞いたものです。ただ、コルトーが遺したものは演奏だけではありません。彼の著述は、すべての人にとってたいへん価値のあるものといえるでしょう。
そのひとつ、「コルトー版」と呼ばれる楽譜シリーズをご存じでしょうか。
まるで詩人のような言葉で、それぞれの楽曲の細かな箇所についての練習方法や分析、演奏への助言などが膨大な量の注釈として綴られているのですが、その言葉の難解さは「フランス人でも読めない」と言われるほどだとか。
その難解な文章を八田惇先生による日本語訳で出版しているのが、全音の《コルトー版(日本語版)シリーズ》です。
その素晴らしさ、美しさは一読すれば誰もがわかると思います。
ここでは、一部をご紹介しましょう。
「舟歌」の前文として掲げられた文章から
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────音楽的表現によって彩られたすべての愛の詩の中でも、ショパンの舟歌は、紛れもなく最も心を動かし、打ち震えさせ、言い知れぬ郷愁をそそる逸楽に満ちたものの一つである。
舟歌の打ち解けた親密な調子を表したいと考えたタウジッヒは、二人以上の前で演奏すべきでないと言った。私ならたった一人がさらに望ましいと言うであろう。というのは、トリスタンを思わせるノクターンでも、うっとりとした夢の恍惚に包まれたこの作品ほど、恋の郷愁に溢れる夜や情熱的な衝動、優しい抑揚を表すものはない。─────
(「コルトー版 ショパン作品集第1集」 25ページより抜粋)
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そしてコルトーはモーリス・ラヴェルがこの曲に寄せたコメントの中で「素晴らしく叙情的に、極めてイタリア風に」と表現したことについて触れ、感情の雄弁な表現を無視し、テクニックだけにとらわれてはならないことを述べています。
そのほかにも、紹介したい文章はいくらでもあるのですが、ここでは伝えきれません。どうぞ手にとって、じっくりと読み込んでみてください。具体的な練習法もさることながら、コルトーの書き綴った言葉にも、注目してもらいたいです。
とにかくコルトーの「詩的」な言葉が魅力的! この文章を読んでイマジネーションが膨らまない人がいるでしょうか? 思わずピアノの前に行って音を出したくなってしまいます。
こんな贅沢で貴重なエディションは他にありません! この唯一無二のエディションは、曲を弾きこみたい方は必見です!!!
さて、命日となる今日、このタイミングで「コルトー版ショパン 遺作集」が発売になりました。これでコルトー版のショパンシリーズはすべて日本語版が出版されました。是非、楽器店で手にとってみてください。
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