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我ら(人間)⊆ 自然界

昨晩(8/25)サントリー芸術財団主催のサマーフェスティバル2011(ミュージック・トゥデイ21)の今年のテーマ作曲家、ジュリアン・ユー(于京君)の新作のオーケストラ作品《我らの自然界のために》("For Our Natural World")が山田和樹指揮 東京都交響楽団の演奏でサントリーホール大ホールにおいて初演されました。

その2日前にはその小ホールで催されたレクチャー(作曲家は語る)で、于氏本人の声で作曲家としての姿勢や音楽の方向性などについての話を聴き、またその翌日には直接的な場で于氏と話をすることで、彼の素朴な人柄や音楽への真摯な姿勢と情熱といった人間性にも触れた上で、昨晩のコンサートでの新作初演に臨みました。

この新作《我らの自然界のために》は当夜のトリで演奏されました。演奏後の周りの反響は、このような現代作品だけが演奏されるコンサートの最後の拍手にしては一様に大変好意的かつ熱狂的なものだったと思います。

特に第3曲の刺戟的な打楽器の響きと延々と続く戦慄的なオスティナート、また逆に粘着的な運び(パッサカリア)の静けさから感情的なクライマックスへと発展する中で管楽器による獣たちの咆哮がさまざまに立ち上る第4楽章の後半2つの楽章は、会場全体を熱狂的な雰囲気で包んでいました。

とにかく聴いて分かりやすく、聴く者にとても受け容れやすい音楽でした。端的に言ってしまえば標題的、描写的な音楽ですが、その根底にある作品のテーマは常に確固たるひとすじの線で維持されていて、たとえそれが か細い線 の状態にあっても切れない強さを保ち続け、それが聴く人を徐々に惹きつけて、やがて聴き手を飲み込んでしまう力に発展していくことを、今回 于氏の作品を生演奏で初めて聴いて、彼の音楽の魅力の側面として実感できた、というのが筆者のもっともな感想です。

これは来週8月30日(火)にサントリーのブルーローズ(小ホール)で開かれる、ジュリアン・ユーの室内楽作品のコンサートでも期待できるものと思います。

なお30日当夜は(岩城宏之さんとオーケストラアンサンブル金沢のCDでも話題になった)ユー編曲の《展覧会の絵》も演奏されます。ぜひ興味ある方は足を運んでみては如何でしょうか。

またプログラムの最初には、于氏が初めて独奏ヴァイオリンの為に書いた作品《ビーバーによるパッサカリア》が山本千鶴さんの演奏で日本初演されます。こちらも大変楽しみです。
これはぜひヴァイオリンを演奏している人、殊にバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータに興味のある人には聴いていただきたいと思う、新しいヴァイオリン・ソロのための作品です。