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フォーレの《マスクとベルガマスク》(オイレンのスコアあり枡)

4月の春の盛りにもかかわらず、この数日のように冬の寒さに戻ったり、うっかりコートを着て厚着をした時には、ポカポカ陽気で上着が邪魔なお荷物になったり、暖かいんだか寒いんだかわからないような、今の季節に聴くのに意外にぴったりなのがフォーレの音楽じゃないかと思います。

雨が降り続くような日にもあってる。

ところでオイレンブルクの《マスクとベルガマスク》の組曲のポケット・スコアが、またまた重版になります。これで出版から4回目(4刷目)の印刷になりました。

一般の音楽好きの方には、この曲をタイトルさえ全然知らない人も多いかも知れません。しかしこの作品をたびたび聴いていて、しかもスコアを買って読みながら聴くという方が、まだまだいらっしゃるということになりますね。

全音はたとえマイナーな作品で、ごく一般では話題にも上がらない作品であっても、キラリと光る優れた作品は逃さずに出版という光を当てて、音楽を愛するユーザーの皆さんの求める楽譜をいつもお手元にお届けできるように努力しています。

 

ところで全4曲からなっているこの組曲ですが、はじめの3曲、「序曲」「メヌエット」「ガヴォット」は、フォーレにしては、と言うのもなんですが、とても元気で、外交的、楽天的な音楽です。

《マスクとベルガマスク》という、なんとなくジミーなタイトルから、そんな風なおとなしい穏やかな音楽が流れ続くような作品じゃないの? という先入観を持たれやすいかもしれませんが、《マスクとベルガマスク》は古典的な様式をもち、楽天的な性格の音楽 (---ハイドンやその時代の音楽を思い浮かべてください---) なのです。まあむしろ「ギャラント galant 」と表現すべきものですが。

元気で楽天的とはいっても、やはりフォーレならではの味わいのある、一流のセンスで紡がれた音楽になっています。

-----そして、最後の第4曲は「これぞフォーレ!」という雰囲気満点の「パストラル」(田園曲)です。曲の途中にあらわれる、旋法で下降していくハープのつま弾きと、それと一緒に折り重なっていく弦のハーモニーが、今日この頃のしっとりとした雨の滴りにぴったりすることでしょう。

お薦めの演奏は、NAXOS MUSIC LIBRARYでも聴けるヤン・パスカル・トルトゥリエ指揮 BBCフィルハーモニー管弦楽団(英CHANDOSの録音)。いつもながらシャンドスが録音会場の空気ごと収めたような優れた録音で、音質も申し分ありません。

少し古い録音になりますが、この《マスクとベルガマスク》の劇音楽全部を録音したミシェル・プラッソン指揮の演奏は、南フランス風で味わいあるローカル・オーケストラの演奏と仏EMIによるアナログ的な音場が良ヒです。劇音楽全曲には、じつは有名な《パヴァーヌ》が含まれていて、合唱入りの演奏が全8曲の最後に現れます。なお組曲の4曲の順番も異なっています。

そして、独特なフランス式木管楽器の音色が、このフォーレの古典的様式のアルカイックな味わいを濃厚にひきだしていてたまらないエルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンドの名盤もぜひどうぞ。今では以前よりCDが入手しやすくなっていると思います(英DECCAの録音。発売はユニバーサルですが、輸入盤ならオーストラリアELOQUENCEレーベルのCDも好い音しています)。

 

[goronanneko]